犬が吐くときの様子で分かる消化器系の病気を詳しく解説
2017/07/19
犬の消化器系の病気では、吐くことと下痢が主な症状です。
吐くという状態には嘔吐と吐出があります。
それぞれの犬の症状から病気の部位や、重症度をある程度予測することが出来ます。
ここでは嘔吐、吐出という症状別に病気を紹介します。
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嘔吐と吐出で病気が違ってくる
犬はどちらかというとよく吐く動物です。
人間と違い犬は我慢することがないので、不調を感じるとすぐに吐いてしまう事が多いのです。
犬が吐くので動物病院で「吐きました」と症状を報告すると、吐いたときの様子を詳しく尋ねられる事があります。
これは「口から液体や食べたものを吐く」という症状を、吐いたときの様子などから主に「嘔吐」と「吐出」の2つに分類するためです。
嘔吐と吐出では問題となっている臓、病気の種類、検査の方針、治療の方針が違うため、できるだけ分類することが必要となるのです。
吐いた時の犬の様子、吐物の性状、食べたものとの関連性(食事後に吐くまでの時間など)、吐いた後の状態などをよく観察しておくようにしましょう。
嘔吐について
嘔吐とは
嘔吐とは主に胃の内容物を口から強制的に吐き出す事をいいます。
嘔吐は消化管内の有害物質を体の外に吐き出す、生体の重要な防御反応です。
生体にとって有害な異物、食中毒物質などを誤って飲み込んでしまった場合や胃腸の感染症では、嘔吐によってこれらを体外に出そうとします。
しかし、胃腸の病気ではなくても嘔吐を起こすことは多く、嘔吐が見られたからといって、胃腸だけが原因とは限りません。
嘔吐の前兆
一般的には吐く前には前兆があり、よだれの増加、唇をなめる、口をクチャクチャさせる、落ち着きがなくなるなどの様子が見られる事があります。
又、嘔吐の直前にお腹に力が入りお腹が強く収縮します。
お腹が膨らんだり、凹んだりを交互に繰り返して、お腹に力が入った後に口から吐いた場合には、胃の内容物を吐いた「嘔吐」である可能性が高いと判断します。
治療の必要がない嘔吐
犬が吐くときはびっくりしてしまうかもしれませんが、落ち着いて吐くときにはその後の様子を観察しておきましょう。
その後の様子によって、治療の必要な嘔吐、治療の必要がない嘔吐と分かれてきます。
治療の必要がない嘔吐とは、嘔吐が1回のみで終わり、その後に嘔吐が見られず、元気で食欲に問題がないようであれば、検査や治療などは行わず、そのまま様子を見てもいいでしょう。
吐いた数時間後に少量の水や食事を与え、その後に吐くことがなければ問題ありません。
嘔吐が見られた日の食事は固い物や高脂肪の物は避け、軟らかいものや流動状のものがいいですね。
翌日になって犬が元気にしているようであれば、普通の食事に戻して大丈夫です。
犬は健康な状態でも夕食と朝食の時間の間隔が長いと、早朝に黄色い液体を吐くことがあります。
これは十二指腸ないの黄色い胆汁が胃内に逆流していることを示しており、夕食の時間と朝食の間隔を短くする事で嘔吐が消失すれば、病的な物ではない事が殆どです。
治療の必要な嘔吐
では犬が吐くときの様子で、治療の必要な嘔吐とはどんな時でしょうか?
同じ日の複数回の嘔吐、元気低下、食欲低下、下痢、腹痛、発熱、体重減少などが見られる場合には、病気によって嘔吐している可能性が高いため、病院へ行き検査や治療を行ってもらいます。
食事後8~12時間が経過しているにもかかわらず、食べたものを嘔吐した場合には胃の運動性が低下しているか、腸閉塞を起こしていると考えられます。
腸閉塞と吐くという事に関しては
「犬の腸閉塞の症状と治療法は?くりかえす嘔吐は要注意!」にも書いていますので参考にしてください。
又、吐いたものが赤かったり、コーヒー豆のカスのような黒いツブツブが混じっていた場合には、胃の中などで出血している可能性があり、重症で緊急性が高い病気のことがあります。
吐物が便のにおいであった場合は、小腸の閉塞の可能性が高いためすぐに病院に行って検査をしてもらいましょう。
犬の全身状態が悪く体を横にしたままで嘔吐をすると、吐物が気管や肺に入り肺炎を起こすことがある為注意が必要です。
吐く事が続くと脱水症状を起こすのが心配です。
背中の皮膚を指で引き上げてみて、皮膚の戻りが悪いようであれば脱水していると判断されるので、点滴などの治療が必要です。
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嘔吐の種類
嘔吐には急性嘔吐と慢性嘔吐の2種類があります。
急性嘔吐とは、嘔吐が見られる期間が3日以内でおさまる場合です。
慢性嘔吐とは、嘔吐が3日以上続くと慢性嘔吐と判断されます。
急性嘔吐と慢性嘔吐では、原因が違うので病名も違います。
それぞれどういった原因があるのか見ていきましょう。
急性嘔吐について
嘔吐が見られる期間が3日以内の場合には、「急性の嘔吐」と判断されます。
急性嘔吐の原因は実は色々あってこれだという特定はが難しい場合があります。
例えば食事内容ですが、いつもの食事と違うものを食べたかどうか、フードを変えた、人の食事をあげた、ゴミ箱をあさった、たばこの吸い殻や異物の誤食、
感染症、旅行など嘔吐の原因がないかあらゆる事を考え、可能性があることは病院に伝えます。
急性胃腸炎、胃拡張捻転、急性膵炎など、自然に体の中で発症する病気も多くありますが、それらを診断する為には詳しい検査が必要です。
異物による腸閉塞や胃拡張捻転は緊急の手術などが必要なこともあります。
急性嘔吐で考えられる病気
消化器系の病気と消化器系以外で考えられる病気があります。
主なものをそれぞれあげてみましょう。
・消化器系の病気
原因不明の慢性胃腸炎・ウイルス、細菌、寄生虫による感染症・腸捻転・胃の運動低下など。
・消化器系以外の病気
急性肝炎・肝不全・急性胆嚢炎・副腎皮膚機能低下症・糖尿病性ケトアシドーシス・急性膵炎・子宮蓄膿症・前立腺炎・精巣捻転など。
慢性嘔吐について
嘔吐が3日以上続く場合には、「慢性の嘔吐」と判断します。
慢性の嘔吐は自然にはなかなか治らない慢性の病気が隠れている場合が多いため、元気や食欲があっても病院で検査をしてもらった方がいいでしょう。
特に体重がここ最近で5~10%以上減少している場合には、重篤な病気が考えられる可能性もあるので注意が必要です。
又、吐くという症状と合わせて元気がない、食欲がない、下痢などが見られたら重症度が高いと考えられます。
慢性嘔吐の原因も様々なので原因を調べるには、多くの検査が必要になってきます。
全身麻酔が必要な内視鏡検査やCT検査をすすめられることもあります。
慢性嘔吐で考えられる病気
消化管閉塞として胃の流出障害や小腸の閉塞が考えられます。
又、胃腸炎や腹部の炎症性疾患、糖尿病、腎不全、肝不全、髄膜炎や脳炎、便秘、裂孔ヘルニアなど色々考えられます。
吐出について
最初の方で「吐くという状態には嘔吐と吐出がある」という事を書きました。
嘔吐と吐出ではどういう風に違うのかを書いていきます。
吐出とはのどから胃までをつなぐ消化官である食道の内容物が逆流して、口から吐き出されることです。
吐出と嘔吐では、原因や検査・治療方針が異なるので区別する必要があります。
吐く様子から嘔吐と吐出を完全に区別することは難しいですが、吐出では嘔吐で見られるような、吐く前の腹部の収縮や、腹壁に力が入ったりすることはありません。
嘔吐のような前触れはなく、突然吐くように私たちには見えるのです。
吐出の原因
急いで多量の食事を食べた場合に吐出を起こすことがありますが、これは病的なものではないので、食事をゆっくり食べさせて様子を見て下さい。
ゆっくり少量ずつ食べさせても吐出する場合や、1日に何度も吐出する場合、吐出だけでなく元気や食欲低下などの症状がみられる場合には、病気の可能性を考えます。
吐出は食道の問題から起こることがほとんどです。
特に小型犬では異物、骨のかたまり、ガムなどが食道にたまり食道の閉塞を起こすことがあります。
また加熱した食事、などを口にして食道が荒れると食道炎がおこります。
吐出が続くと食べたものが胃腸に到達せずに、脱水や栄養不良となるので早急に病院を受診しましょう。
又、吐出では吐物が肺などに入り、肺炎を起こすことがしばしばあり(誤嚥性肺炎と言います)吐出の後に咳や息苦しそうな様子がみられた場合には、病院へ連れていきましょう。
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